WOWOW連続ドラマ「ソロモンの偽証」高校生裁判を演じるキャストたちの魅力

WOWOWオリジナル連続ドラマ「ソロモンの偽証」が面白い。
ドラマは7話目を放送し残り1話（全８話）となったが、転落死事故が起きた学校を舞台に、学校内裁判をめぐっての生徒たちの悩みや真相解明への思いなどを、若い役者たちが熱く演じている。
その魅力と映画版との違いなどについて考えてみたい。

WOWOW連続ドラマソロモンの偽証　原作・ストーリー

宮部みゆき原作。2002年から小説新潮で連載を始め、2011年まで連載が続き（途中休載期間含む）、2012年に単行本が刊行された。
「事件」「決意」「法廷」の3部構成、原稿用紙4700枚の大作。
雪のクリスマスの日に、学校内で発見された男子中学生の転落死の謎をめぐって、前代未聞の生徒だけによる裁判によって、事件の真相を解明しようとする校内の様子が描かれた。

映画版は2015年3月に前編、4月に後編が公開され、それぞれの興行収入が約6億2千万円、約4億5千万。合わせて10億円を突破しまずまずの記録を残している。主演はこの映画でデビューし、役名がそのまま役者名となった藤野涼子。

WOWOWドラマでは、SNSでコミュニケーションを取り合う現代の私立高校設定となっている。
主演は、上白石萌歌。

WOWOW連続ドラマソロモンの偽証　キャスト

ソロモンの偽証は、生徒同士のいじめや喧嘩、友情などを描くと同時に、中学生と学校や両親などの大人側とぶつかり合う物語だ。多くの豪華なキャストの中で、ひとりひとりが個性を発揮していて、とても興味深く見られます。主なキャストは以下の通りです。

藤野涼子：上白石萌歌　
警察官の父と弁護士の母を持つ優等生。同級生・柏木卓也の転落死に疑問を感じ、校内で「裁判をしませんか。わたしたちで」と呼びかけ、学校内裁判を推し進める。
上白石萌歌は、2011年に「東宝シンデレラ」グランプリ（姉の萌音は審査委員特別賞受賞）を受賞し、2012年12月、WOWOWのドラマ「分身」で女優デビューした。
上白石姉妹は、どちらが萌歌か萌音かよく分からなくなるが、萌歌は妹（姉の萌音はNHK朝ドラ出演中）。二人ともコミカルな役が上手だが、萌歌はこうしたシリウスな役をさらりと演じられるのが凄い。
今回も裁判に反対する生徒や先生に対して、ものおじせずに毅然とぶつかる姿勢を見事に演じている。

神原和彦：宮沢氷魚　
転落死した柏木卓也の友人。
藤野涼子の進める学校内裁判に、他校生徒でありながら転落死した柏木卓也の友人として、積極的に協力する謎の青年。子供の時に家族の事件があり、心に大きな傷を持っている。
父親はTHE BOOMのボーカル・宮沢和史。1994年生まれの27歳の年齢だが、中学生役を演じていてもおかしさは感じさせない。柏木卓也との謎の関係をミステリアスに演じている。

三宅樹理：山本舞香
柏木卓也の転落死が自殺か他殺か騒がれる中、親友・浅井松子と行動を起こす。
ひどいニキビやいじめに悩んでいる。
山本舞香は「鳥取美少女図鑑」に掲載された写真で2010年にスカウト。
2011年5月「三井のリハウス」14代目リハウスガールでデビュー。
ファッションモデルと女優を続けている、24歳。
校内でいじめを受け、ニキビに悩む、難しい役どころ。美人女優なのに、ある意味汚い役どころを演じていて、見ていて気持ち悪くなるほど。

野田健一：浮所飛貴（美少年/ジャニーズjr.）
藤野涼子の幼なじみで良き相談相手。転落死の真相を探る涼子と行動を共にする。突然現れた神原和彦を不審に思う。
2016年、中学3年生の時に入所。ジャニーズJr.内ユニット・東京B少年（のちに「Sexy美少年」、「美少年」に改名）のメンバーに選ばれる。2021年6月4日公開の映画『胸が高鳴るのは君のせい』で映画初主演をつとめた。
藤野涼子との幼友達の関係はどのようなものだったのか、気になる存在として演じられている。

柏木卓也：野村裕基
クリスマス前夜に謎の転落死を遂げた生徒。大出俊次らと食堂で騒ぎを起こしてから、学校へ来なくなっていた。
父は狂言の野村萬斎。自身も狂言方和泉流の能楽師。22歳。
校内でいじめを受けながらも毅然と立ち向かう姿が死の謎を深める。

大出俊次：坂東龍汰
学校内外関係なく問題を起こす不良グループのリーダー。日頃の素行の悪さから、柏木卓也の殺害を噂される。
2017年8月に俳優デビュー、24歳。2018年8月放送のNHKドラマ「春子の人形」で初主演。
2020年公開の映画「弱虫ペダル」では、総北高校自転車競技部の主要メンバーとして映画のムードメーカーとなった。現在は日本テレビ「真犯人フラグ」に出演中。
殺害犯人として被告席に座る不敵な顔は、彼の演技の幅を広げている。

勝木恵子：モトーラ世理奈
大出俊次ら不良グループと行動を共にしている。学校内外で問題を起こす俊次に対して、複雑な感情を持つ。
ファッションモデル、女優、歌手。23歳。
本当はとてもかわいい人なんだろうが、ドラマでは不良グループのスケバン風な悪い女子高生イメージを出していて存在感がある。

浅井松子: 富田望生
三宅樹理の親友で唯一の理解者。転落死をめぐって樹理と行動を共にするも、ある悲劇に見舞われる。
2015年公開の映画「ソロモンの偽証で」デビューした21歳。
6年後にまた同じ役でドラマに出演は意外。多くの作品に出演しているが、今回の臆病な女子高校生役も彼女らしい。

津崎正男：小林薫
城鳳高等学校長。差出人不明の告発状を受け取り、生徒や警察、マスコミの対応に苦慮する。事態の収束を図るも、窮地に追い込まれる。
気が弱く大出俊次の父親から圧力をかけられて事件を抑え込もうとするが、学校内裁判が起きるきっかけとなる。学校問題の象徴的存在として小林薫が好演。いかにも頼りない校長を見事に演じているが、最後に毅然とした態度を示す。

藤野剛：髙嶋政宏
警視庁捜査第二課の刑事で、転落死とは別の事件の捜査している。告発状が届いた娘・涼子の相談を受け、津崎校長を訪ねる。
娘の裁判を応援する物わかりの良い父親を見せながら、自分の捜査のために情報をかく姿など、潔癖な娘との対比が描かれる。

大出勝：田中哲司
会社経営者で城鳳高等学校の理事も務める有力者。学校内裁判被告の大出俊次の父親。息子が起こす度重なる問題行動を力でもみ消している。
家庭内では息子と妻に暴力をふるい息子の不良行為のきっかけとなり、この物語のそもそもの原因とも言える。田中哲司は善人的な役柄が多いが、今回のドラマのような悪役もすごみがある。こいつは悪いと思わせる芝居は映画版以上である。

藤野邦子: 坂井真紀
弁護士で藤野涼子の母。転落死に疑問を感じ、学校内裁判を決意した涼子を優しく支える。時に悩む涼子に対し、道筋を示す。
坂井真紀は多くの役を演じこなす名バイプレイヤー。エキセントリックな悪役になることも多い印象があるが、今回の役は仕事をバリバリとこなし、娘の行動を応援する良き母親役。しかし、何か裏もあるのではと疑ってしまう。

三宅未来：西田尚美
三宅樹理の母。学校生活に想い悩む樹理を心配している。一連の問題に対する学校側の対応に不信感を募らせる。
無理に娘を家庭内にとどめ、娘の主張を学校側にぶつけて空回りする毒親的な役柄。映画版では、永作博美が狂気じみた演技をしていたが、ドラマ版の西田の母親役も十分に嫌らしく演じている。

茂木悦男：橋本じゅん
テレビ局の報道記者。いじめや教育問題に力を入れている。転落死の真相を突き止めようと、学校や生徒に取材を重ねる。
大人側の自分勝手なふるまいを象徴する存在。特ダネ狙いのいやらしいテレビ記者を演じていて、藤野涼子とぶつかる場面は見ていて面白い。

WOWOW連続ドラマソロモンの偽証　映画版との違い、

映画版では中学校設定であったので、両作品を比べるとまず役者たちの年齢感がやはり異なってくる。
主演の藤野涼子役は、映画版の藤野涼子はオーディションで選ばれ女優デビュー作でもあったので、初々しい感じがあったが、上白石萌歌は高校生役を演じていても堂々とした感じもある。学校の先生やテレビ局の記者に立ち向かう姿は迫力があり、もちろん女子高校生らしさもあるが、物語をすすめる座長としての貫禄も感じさせる。
また、ドラマでは現代設定のためSNSで犯人についての噂がとびかう。SNSは便利な道具だが、無責任な情報を発信しやすくもなり、危ない道具でもある。ただ、学校名でのいじめやその噂が無節操に流れたり、学校側が情報を隠匿し生徒を押さえつける構図など、根本は変わっていないのかもしれない。
小説の掲載は19年前から始められたが、原作が突きつける問題は現代でも続いており、若いキャストたちがそれを見事に演じている。
映画版とドラマ版の役者たちの演技の違いはとても興味深く、特に、藤野涼子役については映画版とドラマ版の両者ともに素晴らしいので、ぜひ両方とも見てほしい。