有村架純と森田剛『前科者』の演技、台詞。悲しくも、前向きな気持ちにしてくれる映画です【感想とネタバレ】

映画『前科者』を観てきました。
WOWOWのドラマ『前科者 -新米保護司・阿川佳代-』の3年後を描いた映画ですが、阿川佳代のひたむきに保護観察対象者に寄り添う姿は、ドラマ同様に心を打たれるものがありました。映画の感想とドラマ版との違いについて考えてみました。

■予告編

有村架純さんの演技が凄い

ドラマの阿川佳代(有村架純さん)は保護司になったばかりの新米でしたが、3年後の彼女は相変わらずコンビニで働いて生計を立てながら、多くの保護観察対象者を助けていた。時に「あなたは崖っぷちにいます」と厳しく叱るなど、やはり全力でぶつかっていく姿は変わっていない。そうした中、殺人事件を起こして仮出所してきた工藤誠(森田剛さん)の更生を助けることになる。


有村さんは保護司という難しい役柄を真摯に、激しく、そして丁寧に演じていた。厳しく叱ったり、優しく励ましたり、時に怒って、時に笑顔で接する演技が心にしみてくる。保護司の仕事は前科のある方の更生指導と手助けであり、保護観察対象者に踏み込んだ事件への介入は許されていない。

しかし、有村さんが舞台挨拶の時に、保護司もひとりの人間なので、人それぞれ保護観察対象者との向き合い方は違っており、佳代の場合は人のためを思い、怒り、泣きながら、寄り添っていくタイプとして演じていたと語っていた。そこまでする必要はないだろうとアルバイト先の店長に思われていても、突き進むのが佳代の生き方だった。

普通の人では考えられない奉仕の精神で行動する佳代の姿を演じていた有村さんは、ドラマにも増してすさまじいものを感じました。

元ジャニーズアイドルとは思えない森田剛さんの演技

森田さんが演じたのは、殺人事件を犯して仮出所してきた工藤誠。
自動車修理工場で真面目に働き、更生に努める無口な役柄を演じている。佳代との面接でぽつりと「人殺しでも更生できると思いますか?」と聞く姿は、元アイドルからは程遠い。映画の中の森田さんからはV6時代の姿は思い出せない。


殺人事件を起こした贖罪の意識、更生して真面目に生きていこうとする姿、家族を思いやり苦悩する姿、とても痛ましく助けてあげたいとも思うが、一般人にとっては人殺しの人間との接し方が分からないし、彼も普通に社会の中で生活するのは無理だと諦めているようだ。この世の中で人殺しは身近にはいないけれど、そうして苦悩する人は必ずいて、助けてあげなくてはならないと考えさせる。
そのような切ない表情を森田さんは演じていました。

映画の中の気になる台詞

この映画はテーマがとても重く、現代社会の問題をいろいろと考えさせてくれるが、劇中の台詞が耳から心の中に入ってくるように感じた。


まずはタイトルの『前科者』からしてメッセージになっている。前科者との付き合いがない人は多く、名前自体が超ネガティブは響きがある。その前科者を助ける仕事をするのが保護司。
「保護司とは罪を犯した者の更生を助ける無給の国家公務員」。国家公務員とはいうが、結局はボランティアだ。コンビニで仕事をしながらボランティアに打ち込む佳代は、何故そこまでするのか?その秘密は、映画の中で描かれる。


「前科者に必要なのはあんたみたいな人間だよ」と、最初の保護観察対象者だった斎藤みどり(石橋静河)から言われる。本当に強い意志と覚悟をもってボランティアをしていなければ、とても保護司の仕事など務まらない。おそらくお金をもらって仕事をする意識では無理だろうから、無給の国家公務員が正しいのかもしれない。


「保護司の事件への介入は許されません」と保護観察官役の北村有起哉さんから佳代が言われる。事件への介入までは保護司の仕事ではないが、佳代はどうしても保護対象者に深くかかわってしまう。


「おなか減っていますよね」と言って、ドラマ版の時からずっと、佳代は面会に訪れた保護観察対象者に、手作りの牛丼を食べさせる。ドラマでは、斎藤みどりから「佳代ちゃんが作るのはいつも牛丼」とからかわれていたが、映画でも手作り牛丼が出てきて嬉しくなった。何でもない牛丼だがとてもおいしそう食べたくなってしまう。


こうした印象深い言葉がたくさん出てくるのも、この映画の魅力だ。

観る人によって感じ方も変わる映画

有村さんのインタビューでは、「この映画を試写で観て、とてもぶわっとした。いろいろなメッセージが込められていて、観る人によって感じ方が違う。映画を見てそれぞれがで感じてほしい」と語っていました。森田さんは映画を見て「涙が出ました。悲しいというのではなく、物事が浄化されるというか、涙が出てすっきりしました」と語っている。


たしかにいろいろと考えさせられ、涙なくして観られない映画だった。でも、単に暗い映画ではなく、映画としてのエンタテイメント感もあり、笑いもあり、人生を前向きに考えさせてくれる映画でした。

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